家族で決めておきたい災害時の行動ルール|避難先・連絡・役割の決め方

平日の昼間に災害が起きたら、自宅にいる人、職場にいる人、学校にいる子どもは、それぞれ違う場所で身を守ることになります。電話がつながらなければ、家族の返事を待たずに行動を判断する場面もあります。

家族で決めておきたいのは、災害に合う避難先、連絡が取れないときの対応、支援や持ち出しの分担です。担当者がいない場合や、予定の場所へ行けない場合まで考えておくと、家族が別々にいるときにも備えられます。

この記事では、地域の情報を調べながら家庭の行動ルールを決める手順を紹介します。最後の記入例を使い、自分の家庭で確認したいことを整理してみてください。

家族がどこで過ごし、誰に手助けが必要か整理する

最初に、平日の昼間、夜間、休日など、家族の居場所が変わる場面を考えます。細かな予定をすべて書く必要はありません。「昼間は子どもが学校にいる」「日中は高齢の家族が一人になる」といった、行動を考えるうえで重要な違いを押さえましょう。

あわせて、家族それぞれが一人でできることと、手助けが必要なことを確認します。避難情報に気づけるか、内容を理解できるか、自分で移動できるか、連絡手段を使えるかは、人によって異なります。

たとえば、普段は一人で外出できても、停電でエレベーターが使えないと移動が難しくなる場合があります。年齢だけで担当を決めず、住まいの条件や本人の状態を含めて考えてください。

ここで書き出した内容を、避難先や家族の分担を決める前提にします。

地域の危険を調べ、災害に合う避難先を決める

自治体のハザードマップで自宅と普段の行き先を確認する

お住まいの市区町村の公式サイトで、ハザードマップと避難先の案内を探します。見つけにくい場合は、国土交通省・国土地理院のハザードマップポータルサイトから、自治体の地図へ進めます。

確認は、次の順番で進めると整理しやすくなります。

  1. 自宅、学校、勤務先など、家族が普段いる場所を地図で探す。
  2. 洪水、土砂災害、高潮、津波など、地域に関係する災害の地図を確認する。
  3. 浸水の深さや危険区域を、地図の凡例と説明を見ながら確かめる。
  4. 避難先の候補と、そこへ向かう経路を確認する。

一つの地図だけですべての災害を確認できるとは限りません。掲載されていない情報や読み取りに迷う点は、自治体へ問い合わせてください。

避難場所と避難所の役割を区別する

指定緊急避難場所は、災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所です。指定避難所は、避難した人が一定期間生活するための施設です。 同じ施設が両方を兼ねる場合もあります。

指定緊急避難場所は災害の種類ごとに指定されます。「近くの学校だから」と決めず、洪水や津波など、想定する災害に対応しているかを確認しましょう。国土地理院「指定緊急避難場所・指定避難所データ」

家族で共有する際は、施設名に加えて「どの災害で向かう候補か」まで記録します。利用できない場合に備え、別の候補も自治体の案内で調べておきます。

避難先は、行政が指定した施設に限りません。安全を確認した親戚・知人宅なども選択肢になります。その場合は、災害時に受け入れてもらえるかを平常時に相談してください。内閣府・消防庁「避難情報ポスター・チラシ」

経路も一つに固定せず、浸水しやすい場所や崖の近くなどを確認します。平常時に通れる道でも、災害時に安全に通れるとは限りません。現地で経路を確かめる練習は、天候や周囲が安全なときに行いましょう。

地震・津波・大雨で、先に取る行動を分ける

地震の揺れには、その場で身を守る備えをする

地震の揺れを感じたり、緊急地震速報を見聞きしたりしたら、まず身の安全を確保します。家庭では頭を守り、丈夫な机の下などに身を寄せます。慌てて外へ飛び出したり、無理に火を消そうとしたりしないでください。気象庁「緊急地震速報を見聞きしたときは」

平常時には、寝室や居間で家具が倒れたり、物が落ちたりした場合を考え、どこで身を守るかを家族で確かめます。家具の固定など、場所を安全にする対策も必要です。

家族の役割を決めていても、揺れている間に荷物を集めることや、離れた家族の部屋へ向かうことを優先させないようにします。

津波の危険がある場所では、集合や返信を待たない

海辺で強い揺れや長くゆっくりした揺れを感じた場合、津波警報を見聞きした場合は、海辺から離れ、より高い安全な場所へ速やかに避難します。津波は繰り返し来るため、警報が出ている間は戻ってはいけません。津波注意報でも、海から上がり海岸から離れる必要があります。気象庁「津波から身を守るために」

沿岸部で過ごす家族がいる場合は、「連絡を取ってから避難する」「家族がそろってから移動する」という手順にしないことを共有しましょう。避難が必要なときは各自が先に身を守り、連絡は安全を確保してから行います。

大雨では、避難を始める条件を事前に確認する

大雨による洪水や土砂災害などでは、危険が迫る前から情報を確認し、早めに行動する準備が必要です。自治体の避難情報では、次のように行動が示されています。

自治体の避難情報危険な場所にいる人の行動
警戒レベル3 高齢者等避難高齢者、障害のある人、妊産婦、乳幼児連れなど、避難に時間がかかる人は避難する
警戒レベル4 避難指示全員が危険な場所から避難する
警戒レベル5 緊急安全確保命が危険な状況。発令を待って避難を始める段階ではない

警戒レベル5が必ず発令されるとは限りません。また、自治体からの情報を待たず、危険を感じた場合などには自ら避難する判断も必要です。内閣府・消防庁「避難情報ポスター・チラシ」

家族で決める際は、「誰に移動の手助けが必要か」「準備に時間がかかることは何か」を確認し、自分の家庭が動き始める条件を考えます。この警戒レベルの表を、地震や津波にも共通する待機基準として使わないでください。

備蓄があることだけで、自宅にとどまると決めない

洪水等で自宅にとどまる「屋内安全確保」を考えるには、少なくとも、家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないこと、浸水しない居室があること、浸水が続く間の生活上の支障に対応できることを確認する必要があります。

飲料水や非常食・保存食品があっても、薬が足りない、トイレが使えないなどの問題があれば、生活を続けるのが難しくなる場合があります。浸水がどれくらい続く想定なのかも確認しましょう。内閣府「避難情報等について」

これは洪水等の条件であり、地震後の建物の安全や津波への安全を保証するものではありません。土砂災害の危険区域では立退き避難が原則です。建物や周囲に危険があるときは、確認のために危険な場所へ近づかず、安全を優先してください。

連絡がつかないときの行動と、情報の確認先を決める

安否を伝える方法と、伝言を探す電話番号を共有する

普段使う電話やメッセージに加え、利用できない場合の連絡方法を家族で決めます。災害用伝言ダイヤル(171)は音声、災害用伝言板(web171)は文字で安否を伝える手段です。いずれも電話番号を手掛かりに伝言を登録・確認するため、家族が同じ番号で探せるよう、事前に共有しておきましょう。

提供開始や利用条件は災害の状況などによって設定されます。災害時に必ず利用できるとは考えず、公式の案内を確認してください。NTT東日本「171の概要」・「web171の概要」

連絡を取れる状況になったら、誰からの連絡か、いつの情報か、無事かどうか、現在地、当面の予定が伝わるようにします。使う方法を選ぶ際は、災害時の家族連絡方法も確認してください。

集合場所に行けなくても、危険な移動をしない

集合場所は、家族が再会するための候補です。そこへ向かう道や施設が危険なら、決めた場所にこだわることはできません。別の安全な場所へ避難した場合は、安全を確保してから、変更した行き先を伝えます。

「連絡がないから必ず自宅へ戻る」「迎えに行くためなら移動する」といった約束は避け、それぞれがいる場所の安全と、学校・勤務先の対応を踏まえて行動できるようにしましょう。

東京都の帰宅困難者対策でも、大地震の際に学校や企業など安全にとどまれる施設にいる場合は、その施設で待機することが基本とされています。一時滞在施設へ向かう場合も、受け入れ開始の情報を確認する必要があります。東京都「一時滞在施設などの情報」

こうした帰宅困難者への対策を、「どんな状況でも72時間は動かない」という家庭共通のルールに置き換えないでください。今いる場所が危険な場合は、その危険から離れる行動が必要です。

避難情報を確認する手段を、スマートフォン以外にも用意する

平常時に、自治体の防災ページや配信サービス、気象庁の情報を確認できるようにしておきます。地域で利用できる防災行政無線やラジオなど、通信や充電の状況が変わっても情報を得られる手段も調べておきましょう。

家族で情報を見るときは、発信元に加えて、対象地域と発表・更新時刻を確かめます。以前の災害の画像や、別の地域の情報だけで行動を決めないようにします。

ただし、津波からの避難や揺れへの対応など、直ちに身を守る必要がある場面で、画面の確認に時間をかけないことも共有してください。

子どもの引き渡しと、支援・持ち出しの分担を決める

学校や保育施設の決まりを、家庭の予定に組み込む

子どもの迎えは、保護者同士で担当を決めるだけでは完了しません。学校や保育施設の案内で、引き渡しを行う条件、連絡方法、保護者が到着できない場合の対応、代理人の登録が必要かを確認します。

そのうえで、通常の担当者と、担当者が動けない場合に相談する人を決めます。代理人を頼める場合も、施設が認める条件を確認し、相手と事前に相談しておきましょう。

子どもにも、年齢に合わせて「学校にいるときは先生の指示を聞く」「家族がすぐに来られなくても、一人で迎えを探しに出ない」など、施設の方針に沿った行動を伝えます。施設ごとに決まりが異なるため、全国共通の引き渡し基準があるとは考えないでください。

支援する人がいない時間帯も考える

高齢の家族や障害のある家族などに支援が必要な場合は、「誰が付き添うか」に加え、その人が不在の時間帯を確認します。家族だけで対応が難しいことがあれば、平常時に自治体の防災・福祉窓口などへ相談しましょう。

自治体には、避難行動要支援者名簿や個別避難計画に関する取組があります。対象者や手続きは地域で確認が必要です。利用できる支援を相談し、家族の担当だけに頼る計画になっていないか見直してください。内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」

担当者が戻るまで避難を待つことを前提にせず、代わりに支援できる人や、早めに行動するために必要な準備を具体的に考えます。

人の支援と荷物の運搬を、一人に集中させない

子どもを抱える人や家族の移動を支える人に、大きな荷物まで任せると動きにくくなる場合があります。誰が何を持つかを決めたら、本人が実際に持てるか、支援と両立できるかを平常時に確かめましょう。

個人に欠かせない用品も含め、中身と分担を確認するときは防災リュックの中身一覧を参考にしてください。用品の置き場所は担当者以外にも共有しておきます。

災害時は、荷物をそろえるために避難を遅らせたり、取りに戻ったりしないことを、分担とセットで確認しましょう。

決めた内容を記録し、予定どおりにできない場面も試す

家族の行動ルールを一枚にまとめる

話し合った内容は、紙や家族で共有するメモに残します。次の表は、家庭で整理するための記入例です。施設名や担当は、自分の家庭で確認した内容に置き換えてください。

記録する項目記入例
家族の居場所平日昼は大人が職場、子どもが学校。休日は外出先も想定する
災害別の避難先洪水時と地震時の候補を分け、自治体で確認した施設名を書く
避難を始める条件移動に支援が必要な家族がいるため、大雨時はレベル3で危険な場所から避難を始める。準備はそれより前に行う。津波時の行動は別に記録する
連絡方法普段のメッセージ、利用できない場合の伝言手段、家族で使う電話番号を書く
予定の場所へ行けない場合危険な経路は通らず、安全を確保した先から行き先の変更を伝える
子どもの引き渡し学校の条件、通常の担当、登録済みの代理人、迎えに行けない場合の対応を書く
家族の支援と荷物付き添いと運搬を分け、担当不在時に相談する人も書く
情報の確認先自治体の配信サービス、気象庁、地域のラジオなどを書く

電話番号などを含む記録は、家族が使える場所に保管し、外部へ公開しないようにします。スマートフォンだけに保存すると電池切れなどで読めなくなる場合があるため、必要な内容を紙でも持つ方法があります。

「担当者がいない」「電話が使えない」を確かめる

記録を作ったら、家族で「平日昼に災害が起き、電話が使えない」といった一つの場面を考え、それぞれがどうするかを順に話してみます。

このとき、「誰かの返事がないと動けない」「担当者しか避難先を知らない」「子どもの迎えの代わりを決めていない」と分かれば、そこが追加で確認する点です。避難先を記入して終わりにせず、予定が崩れても安全を優先できるかまで確かめます。

気象庁も、訓練後に予定した行動が取れたかを振り返り、違う状況での行動も考えるよう案内しています。気象庁「緊急地震速報を活用した訓練について」

転居、進学、勤務先や連絡先の変更があったときは、記録も更新します。防災用品の見直しと一緒に確認すると、荷物の担当や家族に必要な用品の変化も整理できます。

まとめ|連絡がつかなくても行動できる約束にしよう

家族の行動ルールは、避難先の名前だけでなく、動き始める条件と、予定どおりにできない場合の対応まで決めることで使いやすくなります。

まずは家族が離れている時間帯を一つ選び、「電話が使えなかったら、それぞれどうするか」を話してみてください。分からなかったことを自治体、学校、勤務先などに確認し、記録に加えていきましょう。

家族がすぐに集まれなくても、それぞれが安全を優先できることを、共通の約束にしておくことが大切です。

参考にした情報

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